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海外の議論を読む|BPI翻訳シリーズ

Bitcoin Policy Institute(米国)の記事より

現在地:ビットコインの少額非課税(De Minimis)——米国で何が起きているか

原題:State of Play: The Bitcoin De Minimis Tax Exemption(Conner Brown、2026年3月12日)
原文:btcpolicy.org/articles/the-bitcoin-de-minimis-tax-exemption
翻訳・コメント:Bitcoin Policy Japan|2026年9月

BPJのコメント

米国では、ビットコインで買い物をすると、どれほど少額でも税の計算と報告が必要になります。日本では、円に戻せば約20%、そのまま支払えば最大約55%と、使い方で税率が変わります。理由は違いますが、「持てるが使えない」という結果は同じです。この記事は、米国のビットコイン政策シンクタンクBPIが、少額の支払いを非課税にする制度をどう議会に求め、何につまずいているかを整理したものです。BPJが日本で求めているものと、同じ壁に向かっています。

以下はBPIの記事の全訳です。原文の図表は出典ページをご参照ください。

議会はビットコインの少額非課税を審議中。BPIは、救済がステーブルコインだけでなくビットコインにも及ぶよう働きかけを主導している。

アメリカ人がビットコインでコーヒーを1杯買うたびに、IRS(内国歳入庁)への報告義務が生じる。現行法ではビットコインは「財産」に分類されるため、どれほど少額でも、取引のたびに譲渡益の計算と報告が必要になる。取得後に6セント値上がりしたビットコインで4ドルのラテを買えば、数十万ドル規模の資産売却と同じ税務処理が求められる。これは不合理な帰結であり、米国におけるビットコインの交換手段としての利用を、長年にわたり抑え込んできた。

議会は数十年前、まさにこの問題を認識し、外貨取引に少額非課税を設けた。個人利用の外貨に生じた200ドル未満の差益は課税対象から除かれる。旅行先での買い物に生じた端数まで、IRSが追いかけるべきではないという常識的な判断である。ビットコインの利用者も同じ扱いを受けてしかるべきだ。過去の議会でも2020年と2022年に少額非課税法案が提出されたが、いずれも進展しなかった。第119議会は、この10年で最良の機会である。

第119議会での初動

2025年半ば、シンシア・ラミス上院議員(共和党・ワイオミング州)は、「One Big Beautiful Bill」と呼ばれる財政調整法案に300ドルの少額非課税規定を盛り込もうとした。この規定は十分な支持を得られず、法案は暗号資産に関する税制規定を一切含まないまま7月4日に成立した。その数時間後、ラミス議員は単独法案を提出した。1回あたり300ドルの閾値と年間5,000ドルの上限を設け、あわせてマイナー・ステーカーの二重課税、ウォッシュセール規則など長年の課題にも対処する内容である。両院合同租税委員会(JCT)はこの法案を歳入プラスと評価し、10年間で約6億ドルの増収と試算した。

ホワイトハウスは支持を示している。2025年7月17日、キャロライン・レビット報道官は、政権が暗号資産の少額非課税を支持すると明言した。2026年2月5日の上院公聴会では、ベッセント財務長官が、財務省税制政策室をラミス議員のチームと直接連携させてガイダンスを作る用意があると述べた。

予期せぬステーブルコインへの転換

2025年後半、BPIは議会の風向きが変わりつつあるという情報を得た。GENIUS法の成立を受け、主要な議員事務所の間で「少額非課税の対象はステーブルコインに限るべきだ」という新たな合意が形成されつつあった。過去のあらゆる提案からの大きな逸脱である。数週間後、マックス・ミラー下院議員(共和党・オハイオ州)とスティーブン・ホースフォード下院議員(民主党・ネバダ州)による超党派の討議草案が公表された。少額非課税規定は決済用ステーブルコインに限定され、ビットコインは完全に除外されていた。

[原文の図:ラミス法案とステーブルコイン限定案の比較表]

BPIの対応

ステーブルコイン限定の方向が明らかになるとすぐ、BPIは連合書簡を主導し、スミス委員長とクレイポ委員長に宛てて懸念を伝えた。非課税をステーブルコインに限れば、救済が最も必要でないところに手当てをし、現行ルールが最も過酷に働く利用者を置き去りにすることになる、という趣旨である。

BPIは、今後の提案では差益ベースではなく取引額ベースの閾値を検討し、ビットコインその他のネットワークトークンにも対象を広げるよう提言した。また、2026年1月から取得価額の追跡を義務づけたIRSの新しい1099-DA報告制度が、事態の緊急性を高めていることも指摘した。

書簡に加え、BPIは議会への継続的な働きかけを展開した。過去3か月で19の議員事務所(上下両院、共和・民主、委員会スタッフと個人スタッフ)と面会し、何が懸かっているかを丁寧に説明し、正しい制度設計を訴えた。反応は前向きで、ステーブルコイン限定では不十分だという理解は超党派で共有されており、より広い枠組みへの真剣な関心がある。

[原文の図:法案の想定スケジュール]

今後の見通し

下院歳入委員会は2025年7月16日にデジタル資産の税制に関する公聴会を開き、近く法案文を公表する見込みである。上院財政委員会も2025年10月に公聴会を開き、包括的なパッケージに向けて作業を進めている。ラミス議員は委員会での審議進行を求め続けており、デインズ議員は2026年8月を立法の目標として挙げた。下院では、ミラー議員がPARITY法案を「作業中」と位置づけ、修正に前向きな姿勢を示している。

窓は狭まりつつある。夏が近づくにつれ議会は中間選挙の力学に飲み込まれ、複雑な税制立法に割ける余力は週ごとに縮む。この問題の最も強力な推進者であるラミス議員は、2027年1月に上院を去る。今後数か月でパッケージがまとまらなければ、機会は何年も戻ってこないかもしれない。

BPIは今後も、ビットコインが米国経済の将来にとって持つ重要性と、それを引き出すうえで健全な税制が果たす役割を、議員と政権に説明し続ける。この問題はあまりに重大で、窓はあまりに狭い。成り行きに任せることはできない。

BPJのコメント(続き)

この記事は2026年3月時点のものです。その後の米国の動きと、日本にも関わる論点を2点添えます。

その後の動き

2026年6月、下院の税制を扱う委員会が包括的な法案を提出し、9月16日に委員会を38対5で通過しました(本会議の採決はこれからです)。この法案では、ドルに連動する決済用ステーブルコインは額面で扱われ、支払いに伴う差益の報告が不要になります。一方、ビットコインについて非課税になるのは、送金のたびに支払うネットワーク手数料(10ドル、約1,500円以下)に含まれる差益だけで、支払い本体の差益は従来どおり課税されます。記事が警告した「ステーブルコインだけが救済され、ビットコインは置き去りになる」という方向に、現時点では進んでいます。BPIが議会に求めた水準(1回600ドル、年間2万ドルまでの支払いを非課税)との差は大きく、要求と成立見込みの間には隔たりがあります。

税収への影響という論点

少額非課税に対して当局側から想定される指摘の一つが、「税収が減る」というものです。米国では、コーネル大学の研究者が試算を出しています。その内容は二つの部分からなります。一つは、少額の支払いに生じる差益から現在実際に徴収できている税額は、そもそも小さいということ。もう一つは、税と報告の負担が消えれば支払いが増え、その経済効果を含めれば税収は純増になりうるということです。後者は、支払いが2倍になるといった前提に依存しています。日本でも、この二つの部分について同じ構造の試算が可能です。

ここで目を引くのは、BPIの働きかけの相手が税務当局ではなく議会だという点です。記事にあるとおり、BPIは19の議員事務所と両院の委員長に働きかけ、財務省は「協力を申し出た」側にいます。税収の試算は、当局を納得させる計算というより、議員が判断するための材料として置かれています。少額非課税を認めるかどうかは、税収の増減の計算で決まるのではなく、新しい支払い手段を制度が受け入れるか、国際的な競争で後れを取らないか、という政治的な判断に委ねられている。BPIのアプローチは、そう考えているように見えます。

出典:Bitcoin Policy Institute, "State of Play: The Bitcoin De Minimis Tax Exemption"(Conner Brown, 2026年3月12日)
https://www.btcpolicy.org/articles/the-bitcoin-de-minimis-tax-exemption

本記事はBitcoin Policy Instituteの許諾を得て翻訳・掲載しています。原文の図表は出典ページをご参照ください。

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